G&MARKS(ジーアンドマークス)は『よい変化』をテーマに、日本の魅力を開拓するプロジェクトです。日本には未開の可能性や価値がまだまだあります。伝統文化や土地土地の魅力、人やものごとのアイデンティティを大切にし、これからの未来に向けてよりよい変化を起こす。そんな活動を応援し、紹介します。
ふかやのくすりばこ:百年の歴史を背景とした地域価値の融合

地域文化 × 伝統産業

ふかやのくすりばこプロジェクトは、創業百年を超える地域文化を支える企業同士が共同し『地域文化』と『伝統産業』の融合をテーマに、つなぎ興す価値として新たな未来価値の創出を目指したプロジェクトである。

プロジェクトを進めるのは創業大正2年の大慶堂。埼玉県深谷市の街の薬局として、百年を超える歴史を歩んできた。共同するのは埼玉県本庄市に店を構える関根桐材店。明治33年の創業以来百有余年、純国産の日本桐のみを扱い、昔ながらの伝統技術を継承し一品一品手造りを続ける桐材店である。この薬局と桐材店が協働して取り組む『地域・ジャパンブランド活性化事業』、それがふかやのくすりばこプロジェクトである。

歴史を紐解くと、「くすりばこ」は街とくすり屋の接点としての重要な役割を果たしてきた。一家に一箱「くすりばこ」。その一箱が日常の生活に安心をもたらし、安心と信頼で、街とくすり屋は優しくつながっていた。時代は変われども、くすり屋が街に提供し続けているものは今も昔も同じである。今の時代だからこそ、かつて「くすりばこ」が安心の糸で街と人をつないだように、地域をつなぐ接点を生み出してゆくことはできないだろうか。その思いがプロジェクトを推進している。

プロジェクトの背景には、もう一つの社会的な課題がある。大手チェーン店の台頭により街に従来あった商店と人のつながりは希薄化し、閉店する店も増え、地域特性が年々薄れゆく現実がある。大慶堂は、街の薬屋として改めて地域の価値というものを考え、街の薬屋としてできること、地域の未来価値やアイデンティティを育むことを考えている。力を入れる漢方にも課題がある。健康志向の時代の動きに伴って様々なサプリメントや補助食品が増加し、漢方市場は伸び悩みがある。また、日本の伝統産業を継承する桐材店しかり、安価な輸入材の流入などにより産業は厳しい現実に直面し、需要のさらなる拡張や後継者の育成などの課題に取り組んでいる。

「ふかやのくすりばこ」プロジェクトは、それぞれが目指す課題の解決を目指しつつも、『地域文化』と『伝統産業』を融合し、それぞれの企業の未来価値となり、地域や日本の魅力となるような取り組みを進めている。

TAIKEIDO YAKUHO ブランドがグッドデザイン賞受賞

「ふかやのくすりばこ」プロジェクトでは、共同2社による新たな商品ブランドの立ち上げを行っている。それが『TAIKEIDO YAKUHO ブランド』である。

『TAIKEIDO YAKUHO』は、大慶堂の漢方と関根桐材店の桐箱を現代の需要にフィットさせ、新たな漢方のサービスを提供するブランドである。この『TAIKEIDO YAKUHO』ブランドの商品は2017年度のグッドデザイン賞を受賞している。商品は伸び悩みのある漢方市場と桐材商品市場に一石を投じる商品であり、ブランドが提供する新たなトータルヘルスケアサービスの重要な役割を担っている。

一般に漢方は即効性がない等の既成概念があり、消費者との間に隔たりがある。しかし、漢方は健康と病気の間にある「未病」をケアし、現代人のストレスや心身のバランス調整に最適なセルフメディケーションツールとして機能し、心と体のバランスを整え、日々の生活を健やかで豊かなものにする。『TAIKEIDO YAKUHO』ブランドは、漢方市場(需要)の拡張と既成概念の打破を目指し、時代にフィットした手軽に手にとれるパッケージングスタイルと、それをフォローするトータルサービスのデザインを提供した。「数ヶ月単位の使用と効果の保証」が主流の漢方の市場にあって、あえて「一回分のパッケージ」とすることにより、漢方本来の「良さ」をフォーカスし、消費者との新しい接点を創出している。漢方には「心身に良い」「身体の機能をサポートする」という本来のシンプルな良さがあり、セルフメディケーションに最適。気軽に手にすることのできる1回分スタイルとし、加えて幅広い世代の需要に応えるフレーズやビジュアルを用いたコミュニケーションを取り入れることで、消費者と漢方の「新たな接点」を創出した。また「自分のため」が主流の漢方市場にあってプレゼントにも最適化することにより、気持ちを伝えるコンテンツとしての需要(接点)の創出も目指している。

パッケージングにおいて、地域産業連携で開発する桐箱(薬箱)がセレクトできる形となっている。漢方と桐材の歴史は古く、桐材はかねてより薬箱や漢方の薬箪笥などとして使われてきた歴史がある。桐は多孔質な木材で内部に空気の層を含み、外部の悪条件を遮断する性質がある。また機密性が非常に高いのも特徴。経年変化によりタンニンが表面に染み出し、弱アルカリ性となり保管品を酸化から守る効果もある。その軽さや柔らかさから肌馴染みもよく、桐材は長く薬とともに歴史を歩んできた。桐材のパッケージングとすることで、贈答用のしつらえとなることはもちろん、実際に漢方の錠剤を入れて、くすりばことしても使用ができる。ブランドの提供するスタンダードライン(1ヶ月のパッケージ)では実際に詰め替えのくすりばことなる計画である。


漢方は、薬や様々なサプリメント・健康食品類の増加に伴って市場が伸び悩み、活性化と認知度の向上が求められている。深く消費者に根付いた「年配の方向き」「即効性がない」等の先入観による需要の制約を取り払い、ターゲットを広く拡張する必要性があった。一方で、現代人の生活は、体質改善、ストレス軽減、栄養バランスの整えなど、病気に至らないまでも心身がかかえる課題が山積みである。漢方の果たせる役割はありながら、既成概念が障害となっている状態の中で、心身によく、自然治癒力を高める漢方元来のシンプルなよさに改めて着目し、新たな切り口、新たなスタイル、新たなトータルサービスで、社会と漢方が抱える双方の課題を改善することはできないかと考えられた。

共に百余年の歴史をもち、地域に根付き産業を支えてきた企業同士が、新たな未来を創出するべく連携をしたブランド『TAIKEIDO YAKUHO』。ブランドの今後の展開はもちろん、地域事業として展開される『ふかやのくすりばこプロジェクト』もますます注目される。